Airbnbは、2017年3月に奈良県吉野町にオープンした、世界初のコミュニティハウス「吉野杉の家が、オープン後約1年間でもたらした効果について、以下お知らせします。
奈良県の中心部に位置する吉野町。1年のうち5日間、周辺の山々で何万本もの桜が一斉に咲き誇り、この町は鮮やかな色彩に包まれます。この一瞬を逃すまいと、山間の小さな町には観光客が一斉に押し寄せます。その一方で、吉野町は、高齢化や少子化も進み、若者たちが次々に都会へと出て行くことで急速に人口が減少し、町は徐々に消滅しようとしています。こうした傾向は吉野町に限ったことではなく、日本では、この先10年で700以上の町や村が消えて行くことになると言われています。この状況は地元の産業にとって経済的に不安定な状況を生み出し、文化遺産を危機的状況にさらしています。
世界初のコミュニティハウス「吉野杉の家」は建築と文化の共有を通し、地域の活性化を目指すために生まれました。建築家の長谷川豪とAirbnb共同創業者ジョー・ゲビアのコラボレーションにより、奈良県の吉野町に建設。現代のテクノロジーとコミュニティ主導型のデザイン、そして地元の人たちが受け継いできた伝統文化を取り入れてつくられたこの家は、世界中から訪れるゲストと地域コミュニティとの新しい関係づくりを追求しました。2016年に吉野町で建設が行われ、東京で開催された「HOUSE VISION2016東京展」にてお披露目。のちに奈良県吉野川のほとりに移築されました。その後カフェもオープンし、2017年の4月よりAirbnbのリスティングとして公開されました。
「吉野杉の家」とは
- Airbnbとコミュニティセンターの世界初のハイブリッド
- 31人の地元メンバーで構成される、世界初の“コミュニティホスト”によって運営
- 地方活性化の世界的な取り組みの一環
経済効果
- 「吉野杉の家」がスタートするまで、吉野地域には4件のお部屋しかAirbnbに登録されていなかったが、2018年4月時点で吉野町15件が登録されている
- 2017年4月7日に初の予約が正式に入れられて以降、現在まで「吉野杉の家」には32カ国を超える国から346人を超すゲストが訪れている。その中には、スペインのプリツカー賞を受賞した建築学研究者や、オリンピックに出場したオーストラリア代表オリンピック水泳選手、各地のミュージシャンなどが含まれている
- 2017年中の「吉野杉の家」の稼働率は70%、年間収益は24,990ドル(約270万円)を突破
- 「吉野杉の家」とカフェでのゲストや地元の人の朝食やランチの提供による利益総額は27,804ドル(約300万円)
- 吉野で活躍するAirbnbホストの年間平均収益は2,139ドル(約23万円)
- 吉野全体のホストの合計収入額は50,000ドル以上(約535万円)、吉野杉の家のプロジェクトは、70の雇用を支えるきっかけになりました
地元の体験をとおした文化保護
すでに世界中のコミュニティで、シェアリングエコノミーが個人的、社会的恩恵をもたらし始めています。こうしたピアツーピアのやり取りがコミュニティを形成し、文化交流を促進し、共感や理解を育んでいます。さらに、「吉野杉の家」のようなモデルがさまざまな人たちと共有しながら伝統や文化を保護するための、新たな機会を作り出すという具体的な成果も見られ始めています。
また、「吉野杉の家」は、ゲストの現地体験の中心的な存在となりました。人との直接の関わり合いは、コミュニティを立ち上げ、文化的な交流を発展し、共感や理解を強めました。もっとも目に見える形として、地域が一体となり、この町を訪れる人々に紹介をしながら、伝統文化を保護して守る機会をもたらしています。
共に町を立ち上げる
2017年10月、吉野の町に記録的な強さの台風が直撃しました。2日間で川の水位は瞬く間に普段の5.4m(18ft)も上がり、建物の1階にある共用ダイニングテーブルの下まで浸水してしまいました。しかし、その数時間後、ホスト、町の職員の方々、そしてコミュニティのみなさんまでが吉野杉の家へ一堂に集まり、清掃と修繕作業がはじまりました。地域のみなさんのおかげで、被害は最小限にとどまり、電気系統やパイプへの被害は免れました。そして、数日後には予約受付とホスティングを再開しました。
ゲストの受け入れを再開した後のある夜、吉野杉の家のホストは清掃や修繕をお手伝いしてくれたみなさんを招き、お祝いのパーティーを開きました。
12か月を終えて
ホスティングをはじめてから1年、吉野杉の家は町を訪れる人々にその土地での暮らしのひとコマが垣間見る体験、そして日本だけでなく海外でも、豊かな文化を持つ地域における新たな経済成長のお手本を提供してきました。吉野杉の家はただの「建物」ではなく、「人はみな、コミュニティを求めている」ということを物語る象徴です。
吉野杉の家のオープンから、日本全国や海外のたくさんの町村地区が、吉野の町のようなコミュニティをあげてのおもてなしを取り入れようとしています。その結果、地方のコミュニティに成功に導くヒントを共有し、地域経済の活性化に取り組むことが実現しました。この数年間で、世界中にある類似地域にもこのモデルを取り入れ、地域に根づいた観光と経済の活性化を図っていきたいと考えています。
「吉野杉の家はコミュニティの一部なだけではなく、いまや私たちの生活の一部なんです。」
木材商・大工・Airbnbホスト— 石橋輝一さん
「吉野杉の家のようなプロジェクトをとおして、私たちも「これからの暮らし」のアイディアを模索したり、共有する空間としての「家」について考えたりする機会をもらいました。将来的に世界中の国や地域で応用できるようなモデルを創造することが準備段階での焦点でした。たった1年間の間で吉野の町に起きた成長と発展は、私たちのチームに大きな刺激をもたらしただけでなく、高齢化に過疎化といった同様の問題に直面している世界中の町や村に大きな希望を与えてくれました。」
Airbnb共同創業者兼CPO ジョー・ゲビア